浪速の詩人工房
うわ、おう、うわおう、うわ、うららら!
昔の軍隊はいやなところだったという話をすると
すかさず、嘘だ嘘だと若々しい男の声が跳ね反ってくる。
あんたがた元日本軍兵士は
新兵の頃はそうだったかもしれんが
三年兵、四年兵ともなれば
夜毎夜毎、下級の者に陰湿なリンチを加える喜びに
五体を震わせていたというじゃないか
俺たちもたった一度でいいから
堪能するまで人を苛める楽しみを味わってみたい
うわ、おう、うわおう、うわ、うららら!
命令で異国の戦場へ引っぱり出されるのは
大変気が重かったという話をすると
すかさず、嘘だ嘘だと若々しい男の声が跳ね反ってくる。
あんたがたは与えられた新品の三八式歩兵銃を
後生大事に抱きしめながら
いのちがけの無銭旅行もまた楽し
むこうへ行けば毛色の違った女を抱けるかもと
期待に胸はずませながら
輸送船に揺られていたというじゃないか
俺たちもたった一度でいいから
日の丸の旗をはためかして殺人ツアーに出かけてみたい
うわ、おう、うわおう、うわ、うららら!
戦争で無益な殺生をしたくなかったという話をすると
すかさず、嘘だ嘘だと若々しい男の声が跳ね反ってくる。
あんたがたは殺さなくともいい市民や捕虜の首をはねたり
銃剣で突き刺したり
生き埋めにしたりして
けっこう虐殺を楽しんでいたというじゃないか
俺たちもたった一度でいいから
思う存分人間を殺してみたい
うわ、おう、うわおう、うわ、うららら!
占領地の非戦闘員は大事にしたという話をすると
すかさず、嘘だ嘘だと若々しい男の声が跳ね反ってくる。
あんたがたは若い女とみれば見境もなく強姦し
あとで悶着が起きないようにと
必ず女の胸に一発銃弾をぶちこんでいた
母を求めて泣き叫ぶ幼い子供だって
容赦しなかったというじゃないか
俺たちもたった一度でいいから
異国の女を犯してみたい
うわ、おう、うわおう、うわ、うららら!
戦争だけはやってはならない
今度戦争が起こったら世も末だという話をすると
すかさず、よけいなお世話だと
若々しい男の声が跳ね反ってくる。
俺たちが死のうと生きようとほっといてくれ
あんたがた年寄りがおためごかしに口にする
反戦平和論議なんかちゃんちゃらおかしい
そんなに戦争が嫌いなら
なぜ若い時に命を賭して反対しなかった
なぜ戦争に行ったのだ
なぜ人殺しをやったのだ
そもそもあんたがたに戦争に反対する資格があるのかよ
とにかく俺たちもたった一度でいいから
戦争というべらぼうに面白そうなものをやってみたい
うわ、おう、うわおう、うわ、うららら!
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